イギリス国王ジョージ６世の戴冠式が行われた１９３７年製のロッドです。ハーデイでもこの１９３７年に発行されたアングラーズ・ガイドは特別に”コロネーション・ナンバー（戴冠式版）”の名が付いています。

ハーデイのダブル・ハンド・モデルの中でも人気の高いスペイ・ロッド・シリーズの一つがこのワイです。当時のワイの３ピースには１０‘６“と１１’とのシングルとダブル兼用モデル、ダブル・ハンド専用は１２‘６”と１３’６“の２つのモデルがありました。このロッドはその中でも高いトルクを生みだすステイール・センター仕様です。一般的にワイではかなり珍しい仕様です。

１３‘６“はアングラーズ・ガイドではビッグ・パワーのスペイ・ロッド、更にトルクの高いステイール・センター仕様ですから遠投と大型魚を目指すキャスターにお勧めのモデルです。ただ当店でレストアー後の検証で５０回降ってみましたが１９５０年代以降の一般的なハードな印象の”ワイ”とは若干異なり、トルクの高いパラボリックな印象を受けました。大型魚とのやりとりや本格的なスペイ・キャステイングを楽しむのに適したアクションだと思いました。

ラインは＃７〜８を中心に＃６〜＃９程度まで対応可能と推測しています。ロッド自重６３０グラム。ラバー・エンドまでのグリップの全長は約６１センチ、外径は２６ｍｍです。ブランクのグリップ上部の対面外径は約１４．４ｍｍ、トップ・ガイドの下の対面外径は約３ｍｍです。

ロゴが付いていませんがハーデイ・オリジナル布ケース付き。ロッドの状態は年代から考えるとかなり良好と言えます。 当店お問い合わせ番号 SA９９９。３ピース、２テイップ。グレードは￥６９，３００（税別￥６３，０００）

英国でも軽度なレストアーが施されており手を入れる必要性はそれ程感じられませんでしたがこれからのご使用を考慮し全てのフェルール部の巻き直しを行いました。巻き直し作業と併せて各フェルールの接着の補強を行いました。フェルールの差し込みが経年により若干の摩耗が見られましたので調整を行いました。更にガイドのラッピング部も防水上塗りを行いました。

軽微の曲がり直しを行いました。レストアー終了後当店で５０回ロッドを振ってみましたが摩耗によるフェルールの気になる程のロッドの振動は感じられませんでした。

ロッドの表面の塗装にも大きな剥離やひび割れは見られません。気付かない程の微小な剥離が見られますが英国で薄い防水上塗りが施されているようです。ストリッピングはハーデイ・オリジナルのクリヤー・メノウ・ガイドです。

２テイップの内１本はハーデイの古いブリッジ・リング・ガイドが取り付けられています、この内の１個を交換してあります。他の１本のテイップ（写真下段のテイップ）には何故かオープン・フレーム・ガイドが取り付けられています。但し２本のトップ・ガイドは全く同じハーデイのクリヤー・メノウが取り付けられています。

２本のテイップにはハーデイで作られたと言う強い同一性を感じても違和感は感じられません。珍しいワイのステイール・センター仕様とガイドを違えたテイップと併せて特注で作られたロッドではないかとも推定しています。又、１本が破損し後日ハーデイに於いてテイップを新たに作った可能性も考えられます。オープン・フレーム・ガイドのテイップはラッピング、完成度、テーパーの同一性などからもハーデイ製と推定出来ます。

トップ・ガイドはハーデイ・クリヤー・メノウ・ガイドが付いています。

フェルールの差込には経年による若干の摩耗が見られましたので調整を行っています。キャステイング中に気になるような振動は見られません。当店での５０回振るテストでは手に振動等は殆ど感じませんでした。

オープン・フレーム・ガイドが付いたテイップのメノウ・トップ・ガイドは僅かなフレームの歪みと３か所程のヘヤー・ラインが見られます。

ブリッジ・リング・ガイドのついている同じメノウ・トップ・ガイドには２か所程のヘヤー・ラインが見られます。

アンテイーク・ロッドに慣れたお客様ならこの程度のヘヤー・ラインはしばしば古いロッドでは見られる事で、実際のキャステイングでもそれ程大きな支障が無い事はお分かりと思れます。

かなり珍しい状態の良好なステイール・センター仕様のワイ、アンテイーク・ロッドに慣れたお客様にはお勧めのモデルです。

このロッドが作られたアングラーズ・ガイド戴冠式バージョンによれば、ステイール・センター・モデルには６角形ダブル・ビルドと７角形・９角形ダブル・ビルドの３モデルが書かれています。

当店の推定では左記画像・Fig・１１（４行の画像の上から２番目）の６角形のダブル・ビルド仕様のステイール・センター仕様ではないかと思われます。