現在のデリケートなロッドを感じさせる軽快なハーデイの渓流用3ピース・グリーン・ハード・モデルです。1904年のハーデイのロッドに付いてのデータは現時点で当店手持ちの資料中では見つける事が出来ません、此処に記載された説明は多くが推測になる事をご理解ください。
ハーデイのグリーン・ハート・フライ・ロッドの多くが1980年代中頃から製造を開始し、バンブー・ロッドに素材が移行してからも根強いコレクターのご要望に応えて特注などで1950年代頃まで生産を続けていたようです。古い時代の多くのグリーン・ハート・ロッドは10フィートから15フィートの長いサイズがポピュラーで、加えて現存する多くがテイップがショートしている場合が少なくありません。
そんなアンテイーク・グリン・ハート・ロッドの中でも現在のアクションに極めて類似して長く製造されたショート・ロッドとしては”ホツパー”が知られていますが極めて入手が難しく特に良好な状態のモデルを目にする事は稀です。ホツパーは2ピースのデリケートなモデルですが、掲載のこのハーデイ・グリーン・ハートは3ピース・モデルです。それにしても、シルク・ラインの時代のロング・ロッドがメインであった当時このような極めてデリケートなショート・グリーン・ハート・ロッドが使用されていたことには驚かされます。ホツパーがブルック用として愛用されたように、このモデルも小型のブルック等に使用されたのではと推測できます。そうであれば日本の渓流のヤマメやイワナに適したこのデリケートなアクションも納得できそうです。
3ピース・モデルのデリケートなグリーン・ハートしては”ギニア”シリーズが(後にアイドンとそのロッド名に変わったようですが)このロッドに極めて似ていると推測できます。ギニヤの後継と言われるアイドンのカタログに依れば9フィートから11フィートの3ピース・モデルが作られておりそれぞれにシングル・テイップと2テイップ・モデルが有ったと思われます。
この120年前のロッドの状態はかなり良好でそれ程の使用頻度が感じられません。古い時代の英国の特殊な階級の人々の使用したフライ用品に稀に見られる例ですが、気まぐれでフライ・フィッシングに付き合い数回で止めてしまいそのまま放置されたアンテイーク・ロッドの雰囲気が強く感じられます(当店でそれらに遭遇した折に最も納得のできる理由に思えるのですが)。リール・シートの金具は恰も未使用に感じられる程の綺麗な状態はこの例のアンテイークではないかと言うこの推測を裏付けてくれているように思えます。
現況のままで、今でも日本の渓流の釣り場で滑らかなグリーンハートのアクションを存分にお楽しみいただけます。グリーンハートはただべたべたと曲がるだけと言うイメージは、優れたデザインのモデルを振ると一新されると思います。ハーデイのグリーン・ハートは、素材の優れた特性を活かした次の世代のバンブーとは異質の、ソフトなアクションと曲がり切る最後までその力を貯めて解き放つ事で生み出されるキャステイング・パワーの両方をお楽しみいただけるでしょう。柔らかさが印象に残るグリーン・ハート素材ですが、実際は想像より硬くのこぎりで切るのに苦労するほどなのです。
グリーン・ハートのこれ程のショート・ロッドが存在する事にも驚きですが(それもハーデイである事がさらに驚きですが)、ロッドの状態もかなり良好な事にも信じがたい思いがします。多くの古い時代のグリーン・ハートはその長さ故もありますが多くが先端部がショートしているのが通常です。このロッドはショートも無くスレッドの断裂、ガイドの錆等も見られない大変良好な状態です。
ロッド重量約174g、ブラス・ワインデイング・チェックまで含めたシート一体式柾目コルク・グリップの全長29.5cm、グリップの最大外径約24mm。ワインデイング・チェック上端のバット外径約10.4mm、トップ・ガイド・ラッピング部下のテイップ外径1.5mm。適合ラインは#3をメインに#2と#4程度まで使用することができます。
布ケースはオリジナルではないと思われます。3ピース、1テイップ。1900年代初頭の古い英国製品らしい重厚なアンテイークの雰囲気を保った外観の大変良好な状態です。当店お問い合わせ番号SA969。3ピース、1テイップ。グレードは¥42,900(税別¥39,000)
使用頻度が少なく状態はかなり良好ですが、これからもご使用になれるロッドなので軽微な曲がり直しと、オリジナルの雰囲気の損なわない程度の微少なブランクの防水上塗りとラッピング部の防水上塗りを行いました。一部のガイドやフェルールの微少な錆を取りました(目視では痕跡が分からないと思われます)。