1950年代・シャープス・スコッテイー8‘#4−5 メール 

シャープは1920年に創業、後年の1965年にファーローと合併したスコットランドを代表する釣具の総合メーカーです。このロッドはシャープがファーローと合併する1965年以前のモデルです。職人と素材が揃っていて良質のバンブーロッドを作る状況が残されていた時代です、まだバンブー作りの多くの職人と潤沢なトンキンのストックが存在していたのです。当時、“アバデイーン”と“スコッテイー”は共にシャープの傑作ロッドといわれて最も人気の高いフライ・ロッド・シリーズの一つでした。

このロッドは貴重なコレクター・アイテムで、ハーデイのグラス・ロッド・シリーズのデザイナーとして英国のみならず日本でも知られたデイック・ウオーカー(1918−1985)が使用していたロッドです。幼少より釣りを楽しんでいたデイック・ウオーカーは第2次世界大戦後、グラス繊維工場のエンジニアとして働いていたことからロッド・デザインや著作の道に進む事になります。

このロッドは1985年にデイック・ウオーカーが亡くなった折に幼い頃からの親友であり釣り友達であったピーター・トーマス(1924−2015)に渡ったものですが、運良く当店で買い付ける事ができました。デイック・ウオーカー夫人が書いた彼の使ったロッドであることを証明する書面(1997年)が添付されています。残念ながらオリジナルの書面は一枚 しかありません。当店では複数のロッドを買い付けた為に、証明書とデイック・ウオーカーの所蔵物として認めたピーター・トーマスがサインした品のリストのコピーをそれぞれに添付申し上げます。このロッドもこの所蔵品リストに記載されています。

尚、布ケースはシャープスの物ではありません。大変貴重なロッドと言われている英国・チャップマンのケースに収められています。ケースにはデイック・ウオーカーの自筆で書かれたと思われる古色蒼然とした雰囲気のタグが付いています(他のロッドにも同じタグが付いています)。レストアーをしながら、ロッドの状態からどのような釣り人だったのだろうかとか、このロッドでどんなトラウトを釣ったのかとか、楽しい推測をすることが出来ました。

デイック・ウオーカーの直筆と推定される紙のタグには8‘#5〜6と書かれていますが(シルク・ライン時代のサイズと思われます)、かなり柔らかめで現在のナイロン・ラインでは#4〜5で#3も#6も振れると思われます。日本のフライ・フィッシャマンの好みにぴったりのデリケートなアクションと古い時代のロッドを感じさせるダーク・ブラウンのブランク・カラーが大変好ましい感じがします。

トップとストリッピング・ガイドがクリヤー・メノウ・ガイドの凝った作りから、1965年ファーローと合併する以前の1950年代、それも初頭頃のロッドではないかと推測しています。当時、“アバデイーン”と“スコッテイー”は共にシャープの傑作のロッドと言れて最も人気の高いフライ・ロッド・シリーズの一つでした。

ロッド重量約118g、日本のフライ・フィッシャマンのお好みに合うデリケートな渓流用ショート・ロッドです。ブランクに目立つような傷や曲り等が見られないかなり良好な状態のロッドです。一般的にシャープスのインプリグネーション・モデルは耐久性が高いため良い状態を保っているものが少なくありません。適度な張りとパラポリックなアクション、機能性の高いバンブー・ロッドして長くご使用になれます。ブランクのグリップ上端部の対面外径は約8.8mm、トップ・ガイド下の外径は約2.52mmです。グリップのシートとの接合部分に微小な欠落が見られますが使用上も外見上も支障はありません。

基本的なロッド部分がかなり綺麗で良好なモデル、2ピース、1テイップ、布ケースはオリジナルのものではありません。耐久性の高いインプリ・モデルなのでこれからも長くメインのロッドとしてご使用になれます。当店お問い合わせ番号SA874。グレードは税別・\43,000

基本的な状態がかなり良好な事、貴重なデイック・ウオーカー愛用のロッドである事も勘案して全てのラッピング部分の防水上塗りを行っただけです。軽微なロッドの曲がり直しも行いました。生前のデイック・ウオーカーが手にしていた状態を偲ことが出来る外観を良く保っています。
尚、メノウ・トップ・ガイドのラッピング・スレッドが少しずれたようですが使用上問題がない事と出来る限りデイック・ウオーカーの使用したオリジナル状態を保つために防水上塗り以外は行いませんでした。使用上支障はありません。

グリップとシートが一体式、全長は約24cm、グリップ部分は14.5cm。コルクの状態はかなり良好です。

アルミ・シートは古い時代の特徴である鉛色のアンテイークらしい雰囲気です。グリップ下端部に英国のアンテイーク・ロッドでしばしば目にする、フックを引っ掛けた事から出来たと思われる微小な欠落見られます。

シャープのインプリ・ロッドではよくあることですがスコッテイーのロゴの尻尾部分の一部が欠落しています。ロゴ全体の80%程度は残っていますが、これ以上の剥離を防ぐためにオリジナリテイーを損なわない程度の薄い塗装を施してあります。古い時代のロッドらしくリング・キーパーが取り付けられています。

ロッドには目立つような傷や塗装面の欠落は見られません。今後も長くご愛用いただけるロッドです。アンテイークらしい雰囲気を高めているクリヤーのメノウ・ガイドが付いています、メノウ・リングにヘヤー・ライン・クラックは見られません。

フェルールは確りと非常にスムースに差し込まれてがたつきなどは感じられません。ほぼオリジナルの状態です。

ストリッピング・ガイドとセットのクリヤー・メノウ・トップが付いています。中々メノウ・リングの状態を検証しにくいのですがヘヤー・ライン・クラックの見られない良好な状態に見えます(少なくてもラインは見られないようです)。ガイド・フットを巻き止めたスレッドが少し滑って隙間が空いていますが使用や耐久性に問題がないので防水上塗りだけを行いました(デイック・ウオーカーの使用した感じを損なわないために)。


07/18/2019

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