ニールは当店で初めて目にする珍しいハーデイ・アンテイーク・ロッドです。当店手持ちの英国側のハーデイ資料からは、このロッドの製作年が特定できる以外具体的なデータが見つけられませんでした。何らの情報が見つけられないと言う今までにない経験から、大変珍しいロッドである事は間違いないと思われます。当店では英国側でデータが見つけられない事などから、アメリカ向けに製造されたロッドではないかと推測しています。

当店ではハーデイ・アングラーズ・ガイドの１９５１，１９５２，１９５４年版が手元にあり、それらに“ニール”のロッド名は見当たりません。このロッドの製造された１９５３年版だけが抜けていますが、多分結果は同じだったと思われます（１年限りの製造は考えにくいのです）。更に、英国側のデータでは１９５３年には新しく製造されたロッドはみあたりません。英国の資料に見つからない事や１本だけの特注とは思われない事などから、アメリカ向けのモデルではないかと推測しました。尚、１９５４年には既にハーデイの初めてのグラス・ロッド“パラグラス”シリーズが発売を開始しているそのような時代です（アメリカでのフライ・フィッシングが僅かながら一般の人の間にも浸透しだした時代）。以上の説明は事実と異なる場合もある事をご承知ください。

ロッドのアクションはハーデイのモデルとしてはベリー・ライト・トラウト・シリーズに属するデリケートなモデルと推測できます。その中の“フェアリー”などと類似したアクションで、アメリカのロッドに近いと云えるでしょう。現在のアクションに馴れた方でも違和感なくキャステイングを楽しむ事が出来るでしょう。現在のラインでは＃５をメインに＃４と＃６も振れるロッドです。日本の渓流でドライからウエットまで楽しめる万能モデルと言えます、中・本流域での使用にも対応できます。この年代のロッドには、後年のモデルからは消えてしまった、１９３０年代の丁寧で凝った作りの雰囲気が残っています。

アンテイーク・ロッドとしての状態がかなり良好で、全ての付属品が揃っている事も大変珍しいと言えます。２個のフェルール・キャップ、シルク製と推測される布ケースとタグが２枚揃っています。更にオリジナルのアルミ・ケースが付いています。特筆すべきはこのようなデリケートなアクションのロッドに長さ約１０ｃｍのオリジナル・エクステンションが付いている事です。ライト・スペイにも使用可能なロッドです。尚、このエクステンションは殆どの他のハーデイ・アンテイーク・ロッドに使用が可能です。

瑕疵としては経年でウッド部分が収縮したためにリール・シート金具との間に３ｍｍ程の隙間がありますが使用上問題はありません。コルクグリップ下端部にフックを引っ掛ける事が原因で僅かな欠落が見られます、ブランクの塗装が古い時代のロッドの特徴である縮み皺がみられますが防水上の問題はありません。これらは一般的にはアンテイーク・ロッドの瑕疵とは考えられない程度です。

このロッドは、アンテイーク・ロッドとしての状態がかなり良好である上に、６０年前のアンテイークとしては大変珍しい事にですが、付属品がほぼ全て揃っています。アンテイーク愛好家の方にはこれも大変楽しい事ではないでしょうか。機能としての付属品は、２個のフェルール・キャップ、エクステンション、ラバー・エンドが全て使用できる状態で付属しています。シルク製と思われる布ケースにはハーデイのロゴが綺麗な状態で付いていてケース自体も大変綺麗な状態です。２枚の紙のタグもほぼ完全な状態で付属しています。アルミ・ケースにはハーデイのロゴが掘られていて、張られたシールもかなり多くが残っています。 この時代のハーデイはヨーロッパ各王室の御用達でしたが、このケースにはイギリス国王故ジョージ５世とその長男で皇太子であるエドワード・クリスチャン・ジョージ（爵位のプリンス・オブ・ウエールズ）御用達のラベルが張られています。

ロッド重量約２００グラム、グリップの全長約１５ｃｍ、バット・セクションのグリップ上端部の対面外径約１０．２ｍｍ、テイップのトップ・ガイド下の対面外径約２．１ｍｍです。バンブー・ロッドを使い慣れた方には、シングル・ロッドとしてはかなり軽いモデルと感じるでしょう。3ピース、２テイップ、ハーデイ・オリジナル・アルミ・ケース付。当店お問い合わせ番号ＳＡ７５１。グレードは￥７７，７６０（税別￥７２，０００）

オリジナルのロッドの状態はかなり良好です。 これからも長くご使用が可能な事からオリジナリテイーを損なわないようなレストアーを行いました（殆ど識別できないと思います）。ストリッピングと１個のトップ・ガイドの巻き直しを行っています。ミドル・メス・フェルールの脱着を行いました。インター・ミデイエット・ラップを除いた全てのガイドとフェルール部分の防水上塗りを行いました。ブランクの塗装面の微小な剥離面は塗装で埋めてあります。尚これらのレストアーは識別しにくいかもしれません。

コルク・グリップの状態は通常です。英国ではグリップ下端部にフックを引っ掛ける習慣がある為僅かに欠落が見られますが今後の使用には支障はありません。長さ約１０ｃｍのエクステンションが付いています。

古い時代のバンブー・ロッドの塗装面は経年により縮み皺が出ます。このロッドも２本のテイップとミドル部分にその皺がみられます。微小な塗装面の剥離は塗装を施してあるので今後の使用に支障は出ません。ハーデイのメノウ・ストリッピングはライト・ライン用の細軸フレームが使用されています。ストリッピング・ガイドは今後の使用を考慮して巻き直しを行ってあります。

ライト・ライン・ロッド用の最軽量のサクシャン・ジョイント・フェルールが使用されています。この事からもデリケートなアクションを目指したデザインである事が分かります。

差込は良好でガタツキは見られません。トップ・ガイドは軽量タイプのハーデイ・メノウ・ガイドが付いています。尚、写真下のテイップ・セクションのトップ・ガイドは今後の使用を考慮して巻き直しを行っています。フェルール・キャップが２個揃っています。